6.最後に
 
苦労したこと・・・

 とにかく説明書などまったくない状態からのスタートだったので、全ての工程が手探り状態でした。初めて行う作業ばかりだったので、全てが苦労ともいえます。
 中でも一番苦心したのが、溶接(銀ロウ付け)の工程です。バーナーは、4種類目でやっと成功しました。ひとつ目は、バーベキューなどのアウトドアでよく使用する、ガスボンベ直結型のもの。これは炎が太く、圧力が強すぎたために、銀ロウばかりか、0.5mm厚真鍮板までもが熔けて歪んでしまいました。次は使いきりライターに直結させるもの。炎の温度は1,300℃と申し分なしでしたが、圧力が弱すぎて、銀ロウがまったく熔けませんでした。3度目の正直、と臨んだのはガスボンベ直結型でさらに炎の細いもの。見た目は良かったのですが、圧力がやや足りず、上手くいきませんでした。4つ目でやっと成功です。グリップにガスを注入するタイプのものです。  

 また、銀ロウも、細工用というものに行き着くまでに、何種類も試すこととなりました。
 
 厚い真鍮板には、なかなか銀ロウが馴染んでくれない、ということも分かりました。1.5mm厚の本体フレームは質感たっぷり、重厚で、魅力的だったのですが、とにかく溶接しにくいものでした。バーナーで10分以上加熱しても銀ロウが付きません。僕は途中であきらめたのですが、ある男子生徒が30分ほどかけて、やっとロウ付けに成功していました。拍手ものでした。

現在、研究中のこと・・・

 ムーブメント、風防、竜頭、そして針。この4点は、製作が出来ないでいます。しかし入手するのが難しく、特に針は、常に品薄です。そこで、針ならば自作できないか、と挑戦してみました。
 極細ドリルを準備し、ムーブメントの軸に合う太さを探りました。0.5mm厚真鍮板を小さく針のように切断し、さまざまな太さのドリルで穴をあけ軸に取り付けました。結果、時針の穴は直径1.25mm、分針の穴は直径0.7mmと判明しました。やった!しかし次の瞬間、ちょっとの衝撃で穴が広がってしまい、針が抜け落ちてしまいました。針にするには、真鍮はやわらかすぎるようです。どんな素材が適しているのでしょうか?現在も研究中です。

 また、真鍮の板を丸めてフレームにするのではなく、旋盤を活用して真鍮の塊から削り出す方法でフレームを作りたいと思っています。もうすぐ旋盤が手元に届くので、楽しみです。

 最後に。現在、クォーツのみを扱っています。今後はやはり機械式のムーブメントで、さらにフレームがスケルトン状態のものを製作してみたい!と思っています。すでに手巻き時計は格安で入手済み。後はばらしてムーブメントを流用するのみ!

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松緑職人組合